漫画『笑ゥせぇるすまん』第2話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性が高いことも、ご了承下さい。
第2話「切る」
お客様について
お客様は、理髪店で働いている風太(名字不明)。彼の悩みはその気の小ささから、お客さんに怪我をさせるのではないかという恐れを抱くあまり、顔剃りで上手くカミソリを使えないこと。
ここで、喪黒さんの初ドンが登場。風太の問題は技術ではなくメンタルと察知し、リラックスさせる効果のある薬用タバコを風太に渡します。結果、風太は見事に初めてのお客さんの顔剃りに無事成功する訳ですが……。
この話を読んでみて思ったのは、風太の性格云々はさておき、理髪店の顔剃りというのが冷静になってみると如何に無防備な状態を相手に晒している行為なのかということですね。
また、顔剃りが上手くできない理髪師というのは、藤子A先生の他の作品にも出てくるんですよね。それがブラックユーモア短編集に掲載の『不器用な理髪師』という作品です。藤子A先生自身、理髪店に行って下手な顔剃りをする理髪師に遭遇し、その際の経験から着想を得たのでしょうか?
また、風太は単に顔剃りが苦手なだけですが、計画的に客を襲撃する理髪師の通り魔に、英国のスウィーニー・トッドという存在もいます。あるいはそちらから着想を得て、藤子A先生なりに日本風にアレンジした、という可能性もありますね。
風太の落ち度(?)
今回の話で、笑ゥせぇるすまんではお馴染みの、ある要素が初登場します。
タバコを持ってるだけ置いていきます。このタバコのある内に本当の自信をつけて下さい。
出ました、何があっても守らなくてはならない、喪黒さんとの約束です。
笑ゥせぇるすまんの物語のよくあるパターンでは、この約束があるにも関わらず結局問題を先送りにしてしまい、タバコが尽きてから喪黒さんにお代わりを要求。その際にドーン!を喰らって何らかの制裁を受けることになります。
が、この話ではそうなりません。喪黒さんの物語ラストでの独白をみる限りでは、やはり風太もタバコを使い切るまでに弱点を克服できないという見立てだったようですが、結果は他人が一夜にしてタバコを吸いきるという展開でした。
風太にしてみれば、とりあえず翌日時点ではまだタバコが使えると思っていたところ、いきなりタバコが無いわけです。これは率直に言って無理ゲーでしょう。
確かに約束破りのケースですが、風太に落ち度は全く無かったと言っていいでしょう。他人の影響で守れなかった場合はやはり可哀想に感じてしまいますね。
喪黒さんの能力
さて、今回の喪黒さんの能力ですが、ドン!こそ出たものの、これは単なる気合い入れというレベルのようでした。その他も薬用タバコを手配したのみ。
また、今回の顛末について
新聞を読んで把握している喪黒さん。なんか新鮮です。更にこの後のコマでは
だが、それにしても(事件になるのが)ばかに早かったな
という言葉を口にします。今回の事態の進行速度は喪黒さんの想定外だったようですね。
やはり第2話の時点では、神出鬼没・何でもお見通しという笑ゥせぇるすまんのイメージにはまだ少し距離があり、「悪意ある人間」の域に留まっているように思えますね。
以上、『笑ゥせぇるすまん』第2話の感想でした。